2004年3月 大英帝国ウクレレ交響楽団 meets ウクレレアフタヌーン!


Photo by Tom's Cabin

 ウクレレが現在のような人気アイテムになる事など、誰しもまるで予想していなかった80年代末。 折しも日本は空前のバンドブーム。 巷では、普段どんなにクズのような生活をしている少年であっても、髪を立てギターを抱え皮ジャンに扇情的なメッセージやイラストを描いておれば、誰でもチヤホヤされていた頃ですが。

 ウクレレを手にした10数名から成る、「大英帝国ウクレレ交響楽団」ことThe Ukulele Orchestra of Great Britain(以下UOGB)というヘンテコなグループが、アルバム『ウクレレ変奏曲』でデビュー。 「ウクレレなのにイギリスはロンドンから?」「なんと『ワイルドで行こう』や『サティスファクション』までウクレレで!」ってんで、一部のモンド音楽好き(物好き)な人々の間では、結構な話題になっておりました。
 当時の邦パンク音楽主義者の中にも、その存在くらいは知った人もいるくらいで...って、俺だけど。 でも聞くとこまではいきませんでした。 そのわずか1年後には東京で、我らがウクレレアフタヌーンが発足し、自分もウクレレを手に参加することになるとは、夢にも思わず。

 以来、あちらでUOGBは精力的に活動を続けていらっしゃる、というのを遠目に見つつ、ウクレレアフタヌーンは細々と活動を続け、休止したり、リーダーが交代して活動再開、ゲリラライブで大騒ぎと、ロンドンと東京では接点もないまま、それぞれお互いに歴史を刻んでおりました。

 さて苦節10数年(?)、今やUOGBにもウクレレアフタヌーンにとっても、好都合な世となりました21世紀。 久し振りの日本発売となる新作『シークレット・オブ・ライフ』を引っさげて、UOGBが来日ツアー! これは是非とも拝見したいと思い、心待ちにしておりました。

 さて公演も一週間後に迫ったある日に、届きました一通のメール。 ええなんと!UOGBのメンバーである、Willさんて方からでした。

「Hello Ukulele Afternoon!!
 貴方達の姿は、ロンドンのそこいら中で見かけましたよ。 例のクラークスの広告でね!」

 うわぁびっくり。 だって件の広告キャンペーンなんて、始まってからもう一年も経っていて、イギリスではi-Dとかの雑誌に掲載され、レコードまで作ってもらったのは確認していたけれど、だからといってその後、ウクレレアフタヌーン宛に海外から、賞賛のメールやオイシイ話とかが来た訳でもなく、なぁにキャンペーンなんて、大した事なかったんじゃないの?などと勘ぐっていたところだったのよぉ。
 なんと話によると、我々がモデルになった広告は、特大ポスターが町中いたるところに張り巡らされ、新聞の全面広告にまで登場していたそうなんです。 誰か記念写真くらい撮っておいてくれていないのかな?

 それはともかくWillさん、
「私達は来週、日本ツアーに参ります。
 ウクレレ好きの日本の方達との交流を楽しみにしています。

 それにもちろん出来ることなら、アフタヌーンの皆さんとセッションがしたいっす!」

などと嬉しい事を仰って下さる! そりゃもうこちらこそ宜しくお願いしますと、ライブに伺うのが増々楽しみになって参りました。

 さてUOGB御一行様は、3月頭より日本ツアーを開始。 広島・大阪・名古屋と大盛況のステージを終え、遂に7日(日)、東京は渋谷のクラブ・クアトロにお見えになりました。(なんだか日本のウクレレ的に主要な4都市巡礼ツアーに見えなくもないな)
 その夜のパフォーマンスについては、あちこちで散々語られていることでしょう。 とにかく素晴らしい、エンターテイメント溢れるステージでした。 おまけにライブが終わってからは、メンバーが客席にまで降りて来て、ファン達としばし交流する、という大サービス振り。

 ここで私も、まずはWillさんにご挨拶をしておかなくては...と動くよりも先に、「おお君っ!そのTシャツは!」と、私が着用していた赤毛女のウクレレアフタヌーンTシャツに、リーダーのGeorgeさんが鋭く反応!

 これ幸い、話が早そうだと自己紹介をしてみれば、なんと驚いたことに、UOGB全員が私どもの事をよく御存じでした。 特にこの、目印となった赤毛女は皆さんそうとうお気に入りのようでして、拙HPからイラストをダウンロードし、地元でのライブの際、背景にスライドで映し出したりしていたそうです。 更に、ロングヘアー美女のHesterさんにいたっては、
「勝手にプリントしてTシャツまで作っちゃったのよ(笑)
 ごめんなさいね」
だって!


ファンとの記念写真
もちろんこの中にウクレレアフタヌーンの面々も多数潜伏
Photo by Tom's Cabin

 お互いに活動歴10数年を経ての、やっとの邂逅に大感激。 まだしばらく東京に居残るWillさんとは再会の約束を取り付け、もう翌日に帰国される殆どのメンバー方には、今日の記念に「謹製ウクレレアフタヌーンCDボックス(非売品)」をプレゼント。 お楽しみ頂けましたら嬉しいです。



 さてライブでの興奮も未だ醒めやらぬ13日(土)。 ウクレレアフタヌーンが集まる昼下がりの代々木公園に、ビデオカメラを抱えたWillさんが現れました。


 実はWillさんの本職は、ドキュメンタリー映像の制作。 今回の来日ではUOGBのDVDを作るそうで、ツアー道中ずっとキャメラを回し、ウクレレ愛好家達との交流も記録していました。 そして本日はもちろん、「日本のウクレレ奏者の中で最もクレイジーな集団」として、恰好の対象を捉える意気込みです。
 しかし撮られるからといって、わざわざ身構える訳でもなく、いつも通りに自然体で、気持の良い春の陽気にお酒が美味しくすすんでいる、ウクレレアフタヌーンの幸せな面々。 その横で、つたない英語でインタビューに応じている私。

 この顔ぶれを一目見てWillさん、
「いや色んな人達がいるね...
 真面目に普通に仕事してそうな人もいるし、よくわかんない人もいるし(笑)
 でもみんな、一緒にウクレレを弾く為にここに集まって来るんだねぇ。」

と、感じ入っていらっしゃいました。
「UOGBも元々は、そういう集まりなんだよ。
 色んな職業の人間がいるけれど、一緒にウクレレで面白い事をやってみようっていう。」


 折角なのでカッコ良く演奏しているところも撮ってほしーですから、「テキーラ」「エビバデ」など、我々の十八番を披露。 するとそこへ、Willさんが取り出したのは、実際に使われていたUOGBステージ用のスコア! なんと構成とコード進行しか書かれていない、実なシンプルな物でした。 たったこれだけで、あとはメンバーがそれぞれ素晴らしいキャラクターを発揮して、アンサンブルに仕立て上げていくんだなぁ。
 皆でスコアを取り囲み、「ワイルドで行こう」「ビー・バップ・ア・ルーラ」「オンリー・ユー」「アナーキー・イン・ザ・UK」「サイコ・キラー」などなど、UOGBのレパートリーを大合奏&大合唱!

 UOGBのバッヂが配られ、お返しにこちらもウクレレアフタヌーンのバッジ全種をプレゼント。(後でちゃんとメンバー達で分けて、大喜びで付けてくれているそうです。 誰がどのデザインを選んだのか楽しみ。)
 また、UOGBによる赤毛女イラスト無断流用事件を耳にし、いたく気を良くした作者のえっぢ画伯が、急遽UOGBの為に描きおろした新作イラストをプレゼント、という感動的な一幕も。 もしUOGBがこの絵でTシャツを作るなら、我々も海賊版Tシャツを作らせて頂きますよ!

 Willさんは、奥様と、生後6ヶ月のかわいいかわいいかわいいベイビーをお連れなもので、ベイビーは皆の人気の的です。 奥様もピクニック気分で楽しそう。 適当に楽しくだらだら過ごしたところで、さあいよいよ原宿へ繰り出し、街頭ゲリラライブをやっちゃおう!

 まずは、2000年の記念すべき第一回ウクレレゲリラライブ春節祭の舞台となった、原宿駅前・神宮橋の上を目指します。
 実は昨今、ココでの路上演奏は、厳しく取り締まられるようになってしまいました。 我々が到着した時も丁度、髪の毛の黒くない若者達が、渋々楽器とアンプを撤収中。 従順な若者達の姿を見届け、お上の手先たちが、安心して立ち去って行くところでした。 ラッキー! まさにいま彼奴らが詰め所に帰るところならば、もし何かあって再び通報を受け、ココへ戻って来る事があっても、たぶんしばらくは時間がかかるだろう。 俺達なんかおもむろに、そそっとケースからツールを取り出して、ものの10分もあればひと騒ぎ出来ちまうんだぜ。 いこう!




「ウィー・アー・ウクレレアフタヌーン
 フローム・トーキヨー!」


 曲は「ツイスト&シャウト」、続く「テキーラ!」と大暴れ! 演奏する我々に奇異の眼を向けながら通りすがる人達の表情を、Willさんは楽しそうにカメラに収めます。

 嵐のように演奏を終えたら、ウクレレをケースに突っ込んであっという間に撤収。

「終わった後になんて叫んでるんだい?
 『逃げろ!』だって? それカッコイイね!」

 その後ジャニーズショップ前でも大騒ぎ、行列の婦女子と彼女らを誘導するバイトさん達の苦笑を誘います。 更には世界のGAPストア入口にて、またまた神をも恐れぬ大狂乱。 日本のウクレレ界随一の破落戸ぶりを、存分にアピールしました。
「いやあゲリラライブ、すごいね! 期待していた以上に素晴らしいよ。
 いつか君達がロンドンに来てくれたら、是非一緒にやろう!」


撮ってる方も楽しそう
でもやっぱり一緒にやりましょ



 実はこの後も、御多忙だったWillさん達。 同じ日に各方面からの御招待が重なっており、行く先々でカメラを回すつもりだそうです。 しかし東京の交通事情にはまるで明るくないWillさん、ここはウクレレアフタヌーン何名かで、同行する事にしました。

 でもその前に、アフタヌーン・C嬢の、可愛い和服姿に魅せられてしまったWill奥様。 ここ原宿で着物屋が見たいと仰るので、C嬢の案内で「大江戸和子」というお店へ。 アンティークで安い、赤い夏物の単衣を購入され、御満悦の御様子でした。



 さぁ急いで地下鉄へと引率し、まず伺ったのは
「KENWOODサロン・ド・ウクレレ」、丸ノ内のOLさんを中心としたウクレレ教室の発表会です。 Willさんの登場に「わあ、ホントに来たぁ!」と、驚きと喜びの声を挙げ、騒然となる生徒の皆さん。 UOGBのライブに来ていた方も、大勢いらしたようです。
 講師を勤めていらっしゃる、竹之内先生のグループ
「ウクレレ雑技団」では、Willさんもステージに招かれ、一緒に演奏。 「ペーパームーン」ほかジャズのスタンダードを数曲、「曲知らない。でも大丈夫」とか言いながら、大きい目を更に大きくして譜面を睨み、無事セッションを果たされました。

 続きましては、日本ウクレレ協会(NUA)主催の
「ウクレレ・スーパー・ライブ」を見に、はるばる国分寺のライブハウス「クラスタ」へ。 shu-sanカマテツさん、キヤマンさんという、ウクレレ・アンダーグラウンド界で名を馳せる強者たちが一同に会するコンサートということで、狭い店内は超満員。 その最前列に席を頂いて、カメラを回すWillさん。
 カマテツさんについては
「彼はねぇ、とにかくすごいよ。なんつっても『キング』だから」と言い含めておいてはいたのですが、実際にプレイを目の当たりにしては、さすがに「Amazing!」を連発。
 
「弾いてる手許をアップで撮ってたんだけれど、まるで指先が見えないくらいだった。いや本当にすごいよ。」と、大きい目をまた飛び出さんばかりに大きくしておられました。
 出演者の合間には、NUAのMATT小林さんの紹介を受け、挨拶と一曲演奏(最新アルバムからオーティス・レディングのカバー曲
「HARD TO HANDLE」)という「トクした」ハプニングも。


 その後しばらく、つごう2週間に渡る関東滞在を満喫されたWillさん一家。 帰国直前に、ウクレレアフタヌーンとも所縁深い高円寺の沖縄料理屋「きよ香」にお招きして、お別れパーティーを開きました。 すごくニガウリな煮物や、真っ黒なイカ墨スープやら、豚の耳など、Willさんの目をまた
また大きくさせるような料理の数々で、おもてなし。

Will
「ブランド物の香水にさ、よく『LONDON-PARIS-NEW YORK-TOKYO』って書いてあるだろう?
 ウクレレもやっぱりそういかなくっちゃ!(笑)
 ロンドンはUOGB、東京はウクレレアフタヌーン、パリにはUKULELE DE PARISがいるしね。」


アフタヌーン
「なるほど! じゃあ、あとはニューヨークだね。 誰かルー・リードにウクレレを教えよう!(笑)


Will
「でね、世界中からウクレレのグループを集めて、野外で巨大なフェスティバルを開くんだよ。
 その名も『WOODSTOCK』ならぬ『UKESTOCK』、ユークストック、なんてね!」


アフタヌーン
「それは素晴らしい! グレイト! 是非とも開催しよう!
 もし日本でそいつをやるなら、カシワっていう町がいいと思うよ!」

実現させたいですね(笑)

 
我々がロンドンに行くのが先か、彼らがカシワに来るのが先か、ともかく大英帝国ウクレレ交響楽団とウクレレアフタヌーンの友情よ、永遠なれ! 後生ですから。


Photos by Ettih, MIOX except for noted



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